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乳腺腫瘍の手術方法について教えてください

(ネコ/メス/12歳/名前・にゃー)
この間は、乳腺腫瘍の再発のことで回答頂いて有難うございました。返って来た病理検査の結果がリンパ節転移を続き伴う乳腺癌で、境界が不明瞭な上、高い有糸分裂指数を伴う…というような内容でした。
それで再び手術をしたのですが、筋肉の中にも小さなしこりがブツブツと数個できていたようで、細かくそのしこりの部分を1個1個切り取ったそうです。
こういう場合は細かく切り取る方がいいんでしょうか?
再発のことを考えると、もう少し広い範囲で大きく取った方がいいんじゃないかとも思ったのですが。
それから、今後も再発の可能性があると主治医の先生に言われたのですが、リンパ節にまで転移しているような癌では何度手術をしても再発の可能性がなくなることはないんでしょうか?
再発の度に手術を繰り返し、そのうち手術が出来くなって……と考えると辛いです。(思伊さんより)


思伊さんこんにちは。
にゃーちゃんと一生懸命、病気と闘っている様子がうかがえます。

再びの病理検査の結果を見ると、やはりかなり悪性度の高い乳腺癌のようです。
猫の乳腺癌の場合、悪性のケースが高く、また、今回の病理検査の結果をふまえて考えると、予後(これからの見通し)は楽観できないと思います。

悪性度を示すのに3つのポイントがあります。その分類方法をTNM分類と言われています。
以下におおざっぱではありますが説明致します。

T:原発腫瘍の状況[原発腫瘍の大きさ及び組織浸潤性(にゃーちゃんの場合、境界が不明暸との事ですので組織浸潤性はありと言えます)]
N:所属リンパ節の状況[原発腫瘍に関連したリンパ節に転移しているか否か(にゃーちゃんの場合、リンパ節に転移があるとの事です)]
M:遠隔転移[原発臓器以外に転移しているか否か(にゃーちゃんの場合、遠隔転移に関しては書かれていませんでしたが、猫の乳腺癌の場合、肺や胸膜あるいは肝臓に遠隔転移しやすいと言われています)]

以上のように、にゃーちゃんの場合も予後は楽観できないと思われます。

次に手術の方法の件ですが、基本的に一番重要な事柄としては手術の前にかかりつけの先生と良く相談し、どういった手術方法を取るのがベストか話し合い、理解した上で行うということです。
私の個人的な見解ですが、悪性の腫瘍であれば、思伊さんのおっしゃるように、広い範囲で大きく取る方が良いと思います。理由は肉眼的に発見できるようにまで大きくなった腫瘍以外に、まだ小さくて発見できないような腫瘍もあるかもしれないからです。
乳腺腫瘍の場合は片側の乳腺を全て摘出するということです。

最後に、『リンパ節まで転移しているような癌の場合、何度手術しても再発の可能性はなくならないのでしょうか?』とのご質問ですが、非常に難しいご質問だと思います。
リンパ節に転移があるということは、遠隔転移(肺や肝臓等他の臓器への転移)の可能性があるという事です。肺や肝臓等に転移があるかを調べる方法としては、レントゲン検査やエコー検査等があげられます。しかし残念ながら転移を100%見つける事は難しいです(なぜなら、転移があってもまだ小さい場合、レントゲン検査やエコー検査で見つからない事もあるからです)。
結論的に申しますと、所属リンパ節転移までのケースであれば、原発の腫瘍部(にゃーちゃんの場合、片側の乳腺全て)と所属リンパ節を全て摘出できれば完治の可能性もないとは言えないでしょう。
しかし、所属リンパ節+遠隔転移がある場合は、完治する事は難しいと言わざるを得ないと思います。その遠隔転移があるか否かを調べる手段としてのレントゲン検査やエコー検査であっても、100%確実に判断するのは難しいという事です。 (2003.11.25)