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慢性腎不全の治療方法について教えてください

(ネコ/オス/16歳9ヶ月/名前・のい)
はじめまして。どうぞよろしくお願いいたします。
9日前、慢性腎不全と続き診断されました。
以前から、夏頃から多飮多尿の傾向がありましたが、食欲がありますので、発見が大変遅れてしまいました。1件目の病院では、「いつ死んでもおかしくない」とさじを投げられた状態でしたので、今は2件目の病院に毎日、点滴に通っています。
1週間前、BUN 122、 CREA 6.6、5日間は1日100ccの皮下輸液とビタミン注射、6.7日目150ccの皮下輸液とビタミン注射、週3回の貧血を改善する注射をしましたが、1週間後、BUN >140 CREA 7.9と悪化してしまいました。
年齢も年齢ですし、本人の身体が少しでも楽になれば・・・と思う一心なのですが、毎日点滴に通う苦痛を味合わせても、数値は悪化の一途。点滴をするようになって、本人は、「しんどい時に寝る場所」では寝なくなったので、少しは楽になっているかと思います。
本人を少しでも楽にする治療は皮下輸液、ビタミン注射、貧血を防ぐ注射のみでしょうか? 他に治療方法がないのかと、ネット検索して先生のHPに辿り着きました。ご多忙なのは、承知の上で、メールを差し上げております。
病院に行くきっかけとなったのは、10日前の夜に、口に血がついていたので、救急診療所に連れていこうと電話した際に、「年齢から考えて、歯肉炎で歯茎からの血だと思われるので、明朝、近くの獣医さんへ」と言われた事からです。
普通に食事はしております。体重、2.6キロです。どうぞよろしくお願いいたします。(藤井さんより)


藤井さんこんにちは。
16歳9ヶ月の、のいちゃんが、慢性腎不全と診断され、現在、皮下輸液等、治療はしてもらっているものの、血液検査での腎臓の指標であるBUN、CREA(クレアチニン)の双方共に、上昇してしまっているとのことですね。
 
この慢性腎不全は、高齢の猫に多く発生するやっかいな腎臓の病気で、腎臓自体が萎縮してきてしまうことにより、腎機能が低下してしまいます。同じ慢性腎不全と言っても、残っている腎臓の細胞は個体ごとに違いますので、現在して頂いている治療で、BUNやCREAが下がったり、再び普通の状態に回復したり(回復しても病気自身は徐々に進んでくるので、再び状態が悪くなってくることも容易に予想できます)するケースもままあります。
治療法には、現在して頂いている治療がメインだとは思いますが、処方食やお薬等、他にも併用できる治療はあります(先日のさやまめさんへの私の回答を参考にしてください)。
しかし、のいちゃんの検査結果を見ると、処方食やお薬等の、口からのものは受け付けないかもしれませんね。
 
輸液の量ですが、もし、のいちゃんが一切、水も食事も受け付けないとすると、現在して頂いている輸液の量は、やや少ないかもしれないので、少し増やしてもらうことができれば、その方が良いかもしれません(目安として、1日250cc〜300cc程度だと思います。
正確には、前日と当日の輸液前の体重が同じくらいになることと、体の脱水が起きない量を輸液したいのです。脱水は皮膚を軽く引っ張り、元に戻るまでの時間や戻り方で判定します。
ただし、あまり痩せすぎていたり、あまり太りすぎていたりしているケースでは、判定に誤差を生じることがあります)。

1日の輸液の量、1日に必要な水分の目安は(一切口から水分を摂っていない場合)体重1kgあたり1日50ccが何もしなくても最低必要な量となります。
これを維持量といい、24時間で排泄される尿の量(水を全く飲まなくても尿は出るものです)+24時間での不感蒸泄の量を合わせた量が体重1kgあたり 50ccとなります。
したがって、2.6kgの、のいちゃんでは、130ccということになります(不感蒸泄とは、自覚はなくとも、吐く息や体の表面から失われる水分のことです。ガラスにハーと息を吹きかけると曇るのも、吐く息の中に水分があるからです)。
この維持量以外にも、輸液の前に脱水(既に不足している水分量)があれば、不足分をプラスします。

更に(これは重要なことですが)慢性腎不全のケースでは、腎機能の低下により、尿の量がかなり(正常の猫の倍以上)増えます。
したがって、先程お話し致しました維持量の中の尿の量よりも、多くの輸液量が必要となります。

[維持量+現在の脱水量+慢性腎不全により増加した尿量≒1日の輸液量の目安です]

のいちゃんの腎臓は、だいぶ悪そうな印象で、今回お話ししましたように、輸液の量を増やしてBUN、CREAが下がってくれるか断定はできませんが、今私が考える中で一番可能性の高いことだと思い、お話し致しました。
のいちゃんの回復を影ながら応援しています。
あと、寒いのは腎臓の血管を収縮させてしまうので、おうちでは、少し暖かめにしてあげてください。 (2004.11.22)