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副腎皮質機能亢進症について教えてください

(マルチーズ/メス/11歳/名前・りりー)
副腎皮質機能亢進症の症状を見てたら自分の犬にそっくりなんですが、そうなのかどうか調べるのに続き検査の項目など教えてください。
もし、そうなら治療も教えてください。
抗がん剤と聞きますが副作用が心配です。
原因は何かを多量に食べたりしたからでしょうか? 例えば健康食品とか。(なおみさんより)


なおみさん、こんにちは。
11才雌マルチーズのリリーちゃんが、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)の症状にそっくりだとのことですね。
 
副腎皮質機能亢進症とは、腎臓の前側に左右一対ある副腎という臓器から、本来分泌される副腎皮質ホルモンというホルモンが過剰に分泌されるようになってしまい、その結果、様々な症状を現わすようになる病気のことを言います。
 
ホルモンが過剰に分泌されるようになってしまう原因として、
(1)副腎のホルモン分泌細胞の腫瘍化により、ホルモンを過剰に分泌してしまうもの(副腎性副腎皮質機能亢進症)
(2)副腎にホルモン分泌を指示する司令塔である脳下睡体という脳の下の方にある小さな部分の腫瘍化により、副腎に対しホルモン分泌の指示が過剰になってしまうもの(下垂体性副腎皮質機能亢進症)
の2種類があります。
 
次に症状ですが、以下に述べる症状が単独あるいは複数組み合わさって観察されます。
(1)多飲・多尿・多食。
(2)腹部の膨満。典型的には緊張感のない「ボテッ」としたお腹です(ビール腹みたいな感じです。肝臓が肥大し、腹筋が弱くなることによって起こります)
(3)腹部の皮膚が薄くなり、弾力性が低下し血管が目立つようになり、また毛根に茶色の小さなプツプツとしたものが目立つようになる。
(4)体の脱毛、典型的には左右対称的の脱毛であまり痒みは伴わない。
(5)パンティング(ハーハーと口を開けて呼吸すること)
(6)筋肉あるいは筋力の低下(筋肉に張りがなくなったり、階段や段差など登りにくくなる等)
(7)元気・活動性の低下。
 
これは、とても重要なことなのですが、例えば(1)の多飲・多尿・多食という症状1つとっても、糖尿病等の他の病気でも全く同じ症状を示しますので、症状だけから確定診断を下すことはできません。

そこで、動物病院では、まず第一に、一般的な血液検査や尿検査を行ない、他の病気を除外しつつ、副腎皮質機能亢進症の時に起こりやすい血液検査上の変化(例えば肝酵素(ALTあるいはGPT)の上昇、ALP(アルカリフォスファターゼ)の上昇、総コレステロールの上昇、白血球のうちリンパ球及び好酸球の減少等)がないか調べます。また、レントゲン検査やエコー検査等で肝臓の腫大や副腎の腫大がないか調べることもあります。
これらの検査で副腎皮質機能亢進症の疑いがでてきた場合、更に確定診断に近づけるための検査がいくつかありますが、まず行なわれる検査はACTH刺激試験という検査で、副腎皮質を刺激するホルモン(ACTH:先程お話致しました、脳下垂体から本来出るホルモンで副腎に対し、ホルモン分泌を指示するホルモン)を検査の為に注射し、その注射の前後で血液中の副腎皮質ホルモンがどのように変化するか調べる検査です。
この話は、だいぶ難しい内容になってしまいますので、この辺までとしましょう。
 
治療に関してですが、内科的な治療薬が2〜3種類あります。
そのうち、以前からあるお薬は、副作用等の問題が悩みのたねでしたが、ここ1年くらい前から以前のお薬に比べてずっと副作用のない新しいお薬が注目されてきました。
このお薬は抗がん剤でなく、一種ホルモン剤に分類されるお薬です。また、このお薬は安全性の面からみても、良いお薬で、大学病院などでは沢山の治療例があり、高い評価を得ているようです。
 
最後に、この病気の原因は、食べ物とは全く関係ありません。
最初にお話し致しましたように、副腎または脳下垂体の腫瘍によって起こることが多い病気です。

いずれにせよ、先程お話致しましたように、まず第一に行なうべき一般的な血液検査が必要だと思います。
この病気は説明をするのがとても難しい病気です。今回お話致しました内容もあくまでも一般論であり、だいぶかいつまんだ話であることをご了承下さい。(2005.3.25)