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避妊手術について教えてください

2歳のメス犬を飼っています。
先日避妊手術を受けましたが(事前の説明をよく聞かなかった私もいけないのですが)、卵巣だけしか摘出続きしなかったそうです。
子宮を摘出しなかったことにより将来起こりうる病気が心配です。
やはり再度手術して子宮も取ってもらうべきでしょうか?(なおこさんより)


初めましてなおこさん。避妊手術1つにしても、飼い主さんの立場からすると、色々な心配が起こるものですね。

なおこさんのお話の中にも「事前の説明をよく聞かなかった私もいけないのですが……」とありますが、やはり避妊手術1つでも飼い主さんが全て納得・理解した上で行われるべきものだと思います。そのためにも(あるいはあとから後悔・トラブルが発生しないためにも)飼い主さんは不明な点は獣医さんに聞くべきですし、逆に獣医師は飼い主さんに説明すべきです(インフォームド・コンセント)。

それは飼い主さんにとって、場合によっては「勇気が必要」と思われるかもしれませんが、我々獣医師の多くは飼い主さんに理解してもらった上で、治療できるのがベストと考えています。というのも、ちゃんと理解してくれてる飼い主さんは、例えば処方した薬の重要性を理解してくれて、ちゃんと投薬してくれます。結果として“完治”という方向に向かっていけると思うのです。もし、わからない事があったらなんでも聞いて下さい。素直に聞いて下さい。勇気をもって聞いて下さい。ほとんどの獣医さんはその質問にちゃんと答え、不安を解消してくれると思います。
もし質問しても獣医師が答えてくれなければ、それは「インフォームド・コンセント」の重要性や患者さんの気持ちを理解していないのかもしれません。
話が「インフォームド・コンセント」の話になってしまいましたが、重要な事なので覚えておいて下さい。

さて、避妊手術で卵巣だけ摘出すれば良いのか、卵巣と子宮の両方を摘出すべきなのかという本当に難しい問題です。
私の知る限り、獣医師のなかでも賛否両論で、卵巣だけ摘出すれば子宮の病気(この場合は子宮蓄膿症に限ります。子宮蓄膿症についてくわしくは「第16回動物病院だより」をご覧下さい)には、ほとんどならないと言う報告もあります。「子宮の病気の多くは(子宮蓄膿症等)卵巣のホルモンの支配を受けているから」というのがその基本になっております。
私もその通りだと思いますが、卵巣摘出のみで絶対に残された子宮が病気にならないという100%の保証はないと考え、私個人の考えとして避妊手術と言えば常に卵巣と子宮を摘出しております。
なぜか? それは少々手間でも子宮を摘出しておけば、絶対将来子宮の病気になる事はないからです。
とは言え、なおこさん、先にも言ったように卵巣摘出のみでも子宮の病気を抑制する効果もある程度ありますので、避妊手術をしていないケースに比べ、子宮の病気になってしまう確率は桁違いに少ないと思いますよ。わざわざもう一度麻酔をかけて子宮を取らなくても良いと思いますよ。

でも初めに言ったように、後で後悔しないように不明な点は前もって解決しておく事が大切だと思います。(2002.10.17)