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尿失禁と貧血について教えてください

(イヌ/メス/約6歳9ヶ月/名前・もこ)
先日、血管肉腫の件でご相談させていただいたものです。
お忙しい中、ご丁寧に回答を頂き続き本当にありがとうございました。
その後の経過で尿失禁と貧血があり再度このコーナーを利用させていただきました。
まず尿失禁なのですが、最初は今年6月初めごろ室内に点々と尿を落としていることに気づきました。その時は量も少量でしたし、うれしい時にするお漏らし程度に捉えておりました。この犬のトイレは散歩で外に出た時にするよう習慣づいており、室内のトイレを使用することはありません。それが6月27日(金)に最初のアドリアシンとエンドキサンを投与後6日目の7月3日(木)の朝、今までにないくらいの量の尿失禁に気づきました。この時には前夜の散歩後6時間程度しか経っていませんでした。
その後、気をつけて観ておりますと散歩後1〜2時間する少しづつ尿漏れしているようで時には陰部を舐めていることもあります。腫瘍摘出後で抗生剤は現在でも飲ませておりますので、膀胱炎は考えにくいのではないかと思っています。
ホルモン反応性尿失禁は7歳になる前でもみられることはあるのでしょうか? 何か他に原因として考えられることはあるのでしょうか?
現在お世話になっている獣医師に確認してみましたが、明確な返答はいただけませんでした。
今は6時間毎に散歩に行くようにしていますが、もっと頻回に行くべきでしょうか?
次に貧血についてなのですが、抗がん剤投与後、3日目くらいから舌が白っぽくなっているのに気づきました。
副作用の造血器障害が出ているのかと思っていたところ、本日のオンコビン投与に際しての血液検査でやはり造血器障害を指摘されました。
「おいしいものを食べさせてあげて」といわれたのですが具体的に何を与えれば貧血の改善に役立ちますでしょうか?
普段はドライフードのみを与えていましたが、きょうはヒナ鳥レバーの水煮などの缶詰を購入してきました。このような缶詰を与えると多少は改善につながるのでしょうか?(もこのママさんより)


もこのママさん再びこんにちは。
前回も今回もなかなか難しいご質問ですね。
前回の回答はあまりうまくお答えできなかったと思いますが、今回はどうでしょうか?

まず尿失禁の件ですね。
第1に尿失禁と頻尿を区別する必要があります。そのためには一番重要なのは症状ですが、それ以外に尿検査や膀胱のエコー検査・レントゲン検査が必要な場合もあります。
頻尿(何回も尿意を感じ尿を少量ずつ何回もすること)の原因の一番重要なもの(可能性の高いもの)は膀胱炎です。もこのママさんのおっしゃるように手術の後の抗生剤は飲んでいるとのことですから、膀胱炎の可能性は低いと思われます。
しかし、

1.今投与している抗生剤に対して強い細菌(耐性菌)の感染
2.膀胱結石による膀胱炎
3.膀胱の腫瘍による膀胱炎等

の場合は手術の後の抗生剤を飲んでいても起こる可能性があるのです。
これらの可能性をチェックし、可能性が否定されれば、尿失禁である可能性が強くなると思います。
尿失禁の原因を追求することは難しいことだと思います。
もこのママさんのおっしゃるホルモン反応性尿失禁もその中の1つと考えられます。これは避妊手術(まれに去勢手術)の後、極まれに起こる尿失禁であり、はっきりわかっていない部分も多いのですが(ある調べでは発症年令は1才〜15才で平均8.45才だそうです)卵胞ホルモン(エストロジェン)の欠乏が、骨盤筋肉の張力を減少させる結果、尿失禁を起こすと言われています。
この尿失禁かどうか見極めるためには卵胞ホルモンを注射等で試験的に投与してみるのも1つです。ホルモン反応性尿失禁の場合であれば尿失禁が改善されることがあります(継続治療にはホルモンの副作用等も考慮に入れて、慎重に行われるべきです)。
ホルモン反応性失禁以外にも、膀胱や尿道を支配する神経の病気(あるいはそれら1.神経への腫瘍等の圧迫による神経麻痺)による尿失禁等もあるので、それらの鑑別が必要となると思います(なかなか難しい問題だと思います)。
あと、飲水量が増えると(多飲)、尿の量が増え(多尿)、結果として尿の回数も増えることがあります。
水を沢山飲むような症状はありませんか?

次に貧血の問題ですが「何を食べさせるべきか」の前に貧血の原因は何か?が重要だと思います。
貧血は、

1.再生性貧血
2.非再生性貧血

の2つに大きく分けられます。これら2つのいずれかに分けられた後はさらに様々な貧血の分類や原因に細分されます。
レバーには鉄分が豊富なので鉄分が不足して起こる貧血には有効ですが、動物ではこの鉄欠乏貧血はあまり起こりません。しいて言えば、慢性出血等がある場合は起こる可能性があります。血管肉腫自体が貧血を起こすこともあるので、その部分のチェックも必要になるかもしれません。
いずれにせよ、悪性腫瘍と戦う場合や手術からの回復には、十分な栄養が必要だと思います。
そう言った意味で「おいしいものを食べさせてあげて」と言ってくれたのではないでしょうか?(2003.07.08)