第26回
【知って得する動物の病気の豆知識 その22】
「猫の腎臓病(主に慢性腎不全について)」
今月は猫の慢性腎不全についてお話致します。

 

腎不全とは腎臓の機能(詳細は後述します。)が十分に働かなくなってしまった状態を言います。
慢性腎不全は腎臓の機能が数カ月〜数年かけて徐々に落ちてきて、最終的に腎臓の細胞の約75%以上が働けなくなって(ダメになって)から初めて目立った症状が出てきます。

 

猫は他の動物と比べて今回お話致します慢性腎不全にかかることが多く、特に高齢になってからの発生が多く見受けられます。なぜ猫に多いかはわかっていないようです。

 

 

一般的に飼い主さんが気付く目立った症状としては
●食欲がなくなる
●何度も吐く
●急に痩せてくる・・・

等があげられます。
(これらの症状はいわゆる「尿毒症」の症状で先程述べたように腎臓の細胞の約75%が働けなくなってから出てきます)。

 

しかし、とても重要なことですが、これらの症状が出てくる数カ月〜1年以上前より(個体によってその期間はまちまちですが)「多飲多尿(お水をたくさん飲み、おしっこの量も増え、色や臭いは薄くなります)」の症状を現すようになります。

 

この症状がなぜ重要なのでしょうか?
それは、他の症状に比べて「多飲多尿」の症状は早期に出てくるからで、病気の早期発見につながるからです。
(「多飲多尿」の症状は腎臓の細胞の約66%が働けなくなった時点でまず出てくる症状なのです)
この「多飲多尿」しか現さない時期は食欲も元気もあり一見見逃してしまいがちですが、重要なことなのです。
(ただし糖尿病等他の病気でも「多飲多尿」を現すことがあるので、「多飲多尿」に気付いたら早めに動物病院で受診してもらった方が良いと思います)

 

次に腎臓の働きについてお話致します。

 

 

■4つの腎臓の働き

 

1.体の水分を一定になるように調節しています。
例えば、ダム湖が体の水分とすると、ダムの役割をするのが腎臓です。
ダム湖の水がいつも一定になるように、ダム上流で雨が降らなければダムを閉め、上流で沢山降ればダムを開けるといった事を腎臓が担当しています。この働きにより体の水分の量を一定に保っているのです。慢性腎不全はダムにひび割れが入ってしまい、そこから水がたくさん漏れだしてしまう状態と考えて下さい。
これを動物にあてはめると、多尿の状態になります。初期はこれを補おうとして多飲になります。病気が進み(ダムで言うとひび割れが大きくなり)補いきれなくなると、体の水分は不足し、脱水症状になって急に痩せてしまいます。

 

2.体の老廃物の排泄をします。
生きていく上でどうしても体の中でつくられてしまう老廃物(例えばアンモニアや尿素窒素等:正確には体内でできてしまったアンモニアが肝臓で尿素窒素というものに変えられ、この尿素窒素を腎臓が尿の形で排泄しています)が腎臓の機能低下により、血液中に蓄積されてしまった状態「尿毒症」と呼び、食欲がなくなったり吐いたりします。例えてみると原因物質はちょっと違いますが、気分的にはひどい二日酔いのような気持ち悪さでずっと猫はいると考えて下さい。

 

3.電解質やミネラルの吸収や排泄をします。
体内の電解質やミネラルを一定に保つため腎臓で吸収や排泄をして調節しています。電解質やミネラルのバランスが崩れると体調が悪くなります。

 

4.血液(赤血球)を造るために必要な物質(エリスロポイエチンと言います。)を腎臓が分泌しています。
従って慢性腎不全が進むと貧血を起こすことがあります。

 

以上4点が腎臓の代表的な働きです。

 

 

今月は「猫の慢性腎不全」についてお話し致しました。この内容は犬をはじめ他の動物にも全て当てはまることです。
しかし、猫(中年以上の猫)では、特に発生が目立つので今回はあえて猫の慢性腎不全とさせて頂きました。今回特に私がお話ししたかったことは食欲や元気があっても、「多飲多尿」のみの症状として現わす早期に発見できるように、飼い主さんたちに日頃より「水を飲む量やおしっこの量を気にして頂きたい」と言うことです。

 

もの言えぬ動物達の場合、飼い主さんが気付いてあげる事が重要なのです。動物達が私たちに安らぎを与えてくれるお返しとして、動物達が楽しく健康でいられるように気づかってあげる事が飼い主さんの勤めとも言えるでしょう。
そのためにも、この「動物病院だより」が少しでもお役に立てればと考えております。
他にもこんなことが知りたいということがあれば、お電話でも「ペット相談室」でもお気軽にご相談下さい。
Illust:LES5CINQ(Copyright 2002-2005 All rights reserved.)
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです

 

 

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