第29回
【知って得する動物の病気の豆知識 その25】
「盲導犬・聴導犬・介助犬:身体障害者補助犬法」
今月は病気の豆知識ではありませんが、平成15年10月から施行された「身体障害者補助犬法」を含め、盲導犬・聴導犬・介助犬や、彼等を利用している使用者(以後ユーザーとします)についてお話しさせて頂き、皆様と考えていきたいと思います。

 

先日、私の住んでいる静岡市で「身体障害者盲導犬のことをもっと知ろう!」と題して「身体障害者補助犬法」の説明も兼ね、市民セミナーが開かれました。
その時にお話しして頂いた内容を私なりにまとめ、多くの方々に知って頂けたらと思い、いつもの「動物病院だより」と少々違う感じかもしれませんがお話ししたいと思います。

 

 

目や耳、からだの不自由な人の目・耳・手足のかわりをしてくれている犬を総称して、補助犬(以後アシスタントドックとします)と呼んでおります。
アシスタントドックには【1】盲導犬【2】介護犬【3】聴導犬の3種類があります。

 

【1】盲導犬(平成15年4月現在、日本全体で927頭が登録されています)
目の不自由な人の目の役割りをしてくれて、障害物を避けながらあるいは、ユーザーに障害物の存在を知らせ、安全に誘導することが仕事です。体にハーネスというハンドルをつけているのが特徴です。

 

【2】介助犬(平成15年4月現在、日本全体で37頭が登録されています)
からだの不自由な人の手足となって働きます。ドアや冷蔵庫等の扉を開けたり、電気をつけたり、落としたものを拾ったりと、障害に応じて活躍します。

 

【3】聴導犬(平成15年4月現在、日本全体で15頭が登録されています)
耳の不自由な人に音を知らせます。お湯の沸く音、ドアのチャイム、電話やFAX、車のクラクション、非常ベルなどを聞きわけて、伝えます。

 

これら、アシスタントドックの働きのおかげで、障害をお持ちの方々も、一般社会に参加する機会が増え、人と人とのコミュニケーションを楽しむことができるようになってきました。
しかし、一方で「身体障害者補助犬法」が定められる前は、飲食店・旅館やホテル・タクシー・その他各種施設で利用を拒否されるケースも多く、アシスタントドック同伴のユーザーにとって、大きな問題でした。

 

1年前、第1弾(平成14年10月施行)の「身体障害者補助犬法」が施行され、公共施設や公共交通機関を利用する際にアシスタントドックが同伴することができるようになり、今回、第2弾(平成15年10月施行)の「身体障害者補助犬法」の施行により、一般のホテル・デパート・レストラン・タクシー等不特定かつ多数の人が利用する民間施設も利用する事が出来るように法令化されました。この法律は、施設側はアシスタントドックを連れている事を理由に利用を拒否できない事を明示した一方、アシスタントドックの管理や責任をユーザー側に持たせるといったものです。
要はお互いに気を配り、尊重し合いながら、社会づくりをして行きましょうという事です。法律だけできても、お互いを気遣い尊重し合わなければ、良い社会づくりはできないのです。
今回、「動物病院だより」にこの題材を取りあげたのも、多くの方々にこういった事を理解して頂き、少しでもより意識を高めて頂けたらという思いからです。

 

 

それでは、実際アシスタントドックに出会ったら、どのような点に注意したら良いのでしょうか?

 

道や施設等で出会うアシスタントドックは、身体に障害のある人を助ける仕事の最中で、集中して仕事をしております。したがって、以下に示す点に注意して、あたたかく見守って下さい。

 

 

■アシスタントドックに出会ったら

 

●触ったり、じっと見つめたり、声をかけたり、口笛を吹いたりしないようにしましょう! ペットを連れていたら、近づかないよう工夫しましょう!
・仕事ができなくなったり、ユーザーに危険が及ぶこともあります。

 

●大きな声を出したり、こわがったり、逃げたりしないようにしましょう!
・かみついたり、吠えたりしないように訓練を受けています。
・清潔にしているので、食事をする場所でも大丈夫です。

 

●食べ物を見せたり、あげたりしないようにしましょう!
・食事はいつも健康で(下痢などせず)仕事が出来るようにユーザーが管理しています。

 

●身体に障害のある人が困っているようなときは、「何か困っていますか?」とか「お手伝いしましょうか?」と声をかけて下さい。

 

 

先程も述べましたが、「身体障害者補助犬法」は、施設側にアシスタントドック同伴のユーザーの利用を拒否できない事を明示した一方、アシスタントドックの管理や責任をユーザーに義務づけています。
しかし、この管理や責任を、身体に障害のある方にすべてを自分でしなさいということではありません。ユーザーが自分ではできない事を、どなたかにお願いしてやってもらうという形でも立派に管理・責任を果たしていることになります。そんな時はやさしく手を差しのべてあげたいものです。

 

 

今月は、10月に施行された「身体障害者補助犬法」についての簡単な説明と、アシスタントドッグについて及び、アシスタントドッグとの接し方についてお話し致しました。

 

せっかく法律ができても、人の考えや気持ちがなければ、意味のない事なのです。
特にアシスタントドッグとの接し方に関しては、大人ばかりでなく、子供達にも理解しておいてもらう必要があります。
今夜、ご家庭で、アシスタントドッグについて一度お話ししてみるのも良いかもしれませんね。

 

もの言えぬ動物達の場合、飼い主さんが気付いてあげる事が重要なのです。動物達が私たちに安らぎを与えてくれるお返しとして、動物達が楽しく健康でいられるように気づかってあげる事が飼い主さんの勤めとも言えるでしょう。
そのためにも、この「動物病院だより」が少しでもお役に立てればと考えております。
他にもこんなことが知りたいということがあれば、お電話でも「ペット相談室」でもお気軽にご相談下さい。
Illust:LES5CINQ(Copyright 2002-2005 All rights reserved.)
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです

 

 

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