第32回
【知って得する動物の病気の豆知識 その28】
「細胞診」主にニードルバイオプシーについて
今月は腫瘍等の診断等に行なわれる「細胞診」についてお話し致します。
「細胞診」とは文字通り細胞を調べる事により診断を導く診断技術を言います。
検査するための細胞を採取する方法はいくつかありますが、今回はその中でも手軽に行える「ニードルバイオプシー(あるいは針生検とも言います)」について説明したいと思います。

 

犬や猫のみならず、小鳥・ウサギ・ハムスターをはじめ、全ての動物において、体にできもの(以後しこりとします)ができることがしばしばあります。
体にしこりが出来た場合、そのしこりが腫瘍なのか、あるいは腫瘍以外のしこり(例えば化膿した膿瘍や炎症による腫れ、及び血腫等)なのかを調べる事が以後の治療方針を決定するうえで必要不可欠な事となります。
獣医師であっても体にできたしこりを、外観だけで腫瘍か否かあるいは良性の腫瘍なのか悪性の腫瘍なのかを確実に判断することは不可能であり、診断を誤ってしまうことにもなりかねません。
それを調べる方法として、ニードルバイオプシーという方法があります。

 

これはまず、体のしこりに注射針を刺し、その注射針の中にそのしこりの一部の細胞を採取します。次にその採取された細胞を取り出し、染色を行ない顕微鏡で調べる事により腫瘍細胞か否かを調べるのです。その結果、そのしこりが腫瘍なのか否か、あるいはこれからどのような治療をしたら良いのかの方針を決定する事ができます。ただし、しこりの一部の細胞から診断をするという事は必ずしも100%適確に診断がつくとは限りません。時には他の検査が必要になることもあります。
ニードルバイオプシーは注射針で刺すだけの簡単な検査ですので、注射を1本する程度の痛みしかなく、普通は麻酔なども必要ありません。そしてなんと言っても数分で検査の結果が得られるのが最大のメリットです。このように、スピーディーで簡単な検査のわりに重要な情報が得られる検査なのです。
それでは、体のしこりに関して飼い主さんとしてはどんな点に気をつければ良いのでしょうか。

 

 

【1】日頃より、体をなでてあげるようにスキンシップをこころがけましょう。
日頃、体の色々な部分をなでてあげる事により、お互いの信頼関係深まるばかりでなく体にしこりができた場合でも小さなうちに(早期)に発見することができます。

 

【2】しこりを発見した場合は、すぐに診察を受けましょう。
体にしこりができたのがわかったら、そのまま「様子を見る」という事は、一番危険な事なのです。なぜなら、もし、そのしこりが悪性の腫瘍だった場合、様子を見ているうちに、他に転移を起こしてしまい、手遅れになってしまうこともあります。
また、運良く転移はしなくてもしこり自体が発育し、大きくなり、大がかりな手術をする必要が出てくるケースもあります。腫瘍の種類によって違いはありますが、一般的には悪性の腫瘍といえども、末期になるまでは食欲や元気は変わらないものです。「しこりができても元気や食欲があるから・・・」と放置しないようにして下さい。ニードルバイオプシーにより「早期発見.早期治療」が可能となり、救命率はぐんとUPするのですから、しこりを発見した場合早めにかかりつけの先生に相談するようにしてあげて下さい。

 

 

今までも「ペット相談室」のほうに、数件「しこり」に関するご質問を頂き、そこでも「ニードルバイオプシー」の重要性をお話ししてまいりました。日頃こういったご相談が多いようなので、今月はより詳しく「細胞診及びニードルバイオプシー」についてお話しさせて頂くことに致しました。

 

もの言えぬ動物達の場合、飼い主さんが気付いてあげる事が重要なのです。動物達が私たちに安らぎを与えてくれるお返しとして、動物達が楽しく健康でいられるように気づかってあげる事が飼い主さんの勤めとも言えるでしょう。
そのためにも、この「動物病院だより」が少しでもお役に立てればと考えております。
他にもこんなことが知りたいということがあれば、お電話でも「ペット相談室」でもお気軽にご相談下さい 。
Illust:LES5CINQ(Copyright 2002-2005 All rights reserved.)
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです

 

 

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