第58回
【知って得する動物の病気の豆知識 その54】
「フィラリア症」
今月は犬の心臓内に感染・寄生(まれに猫やフェレットにも感染します)するフィラリアと言う寄生虫についてお話し致します。
フィラリアは様々な寄生虫の中でも命に関わる最も恐ろしい寄生虫と言われています。

 

寄生虫にはフィラリア以外にも回虫・鉤虫・鞭虫・条虫・コクシジュウム…etc.と沢山の種類があります。
これらフィラリア以外の寄生虫はほとんどが腸の中に寄生するので適切な駆虫薬を使って駆虫すれば回虫などは便と一緒に排出されてしまいますので全く問題はありません。

 

しかしフィラリアは心臓の中に寄生する長さ15〜25cm位のソーメン状の寄生虫です。したがって様々な問題がおこります。

 

 

■例えば…
1.心臓の機能(心拍出量)がフィラリアの寄生数に比例して低下し血流が悪くなり、重症になると心不全を起こし命に関わる事があります。
2.いったん寄生してしまうと駆虫するのに危険を伴います。なぜなら駆虫をするとフィラリアの駆虫薬で死んだフィラリアは心臓内から血流に乗り肺動脈に栓塞を起こして(つまって)しまう事があるからです。正確に言うと少々違いますが足にできた血栓が肺動脈に栓塞を起こしてしまうエコノミー症候群が最近注目されていますがそれととてもよく似た状態です。これも命に関わります。
いったん感染してしまうと回虫のように簡単に・安全に駆虫できない点でもやっかいな虫と言えるでしょう。

 

感染してからでは、前述したようにとてもやっかいな問題が起きてしまいますので、感染しないための「予防」が大切な事であり、愛犬にとって一番安全な方法です。現在では1ヶ月に1回予防薬を飲ませるだけで、確実に予防できる予防薬があります。
現在この方法が主流であり、だいぶ一般の飼い主さん達にも浸透してきているようです。投薬期間は地域(平均気温の違い)によって多少違いがありますが、基本的には蚊が出始めてから1ヶ月以内に予防をスタートし、最終投薬は蚊がいなくなってから1ヶ月後までということになります。
フィラリアに関する情報は様々なサイトに紹介されていると思いますので、詳細はゆずることとして以下は私自身のフィラリアに関する回顧録として読んでいただければと思います。

 

私が、寄生虫というとまず頭に思い浮かべるのは、私が小学校の頃(今から35〜40年程前のこと)1年に1回くらい検便をマッチ箱に入れて学校に持っていったり、チョコレート味(?)の回虫の虫下しを飲まさせられたと言った具合で、当時は回虫やギョウチュウに感染してた子供が沢山いたように思います。
しかし現在の日本は衛生的な国となり、寄生虫なんかに感染している子供は皆無といっても良いのではないでしょうか。しかし現在でも、開発途上国ではまだまだ寄生虫病を始め、先進国では考えられないような単純な病気に悩まされている国が沢山あります。

 

犬のフィラリア症も同様に、私が子供の頃はフィラリアの予防法がまだ無かったので、5〜6才でフィラリア感染により死亡してしまう犬が多かったのです。犬の5〜6才と言えば、人間の年齢に換算すると36〜40才といったところです(若過ぎます)。
「ケッケッ」と苦しそうな咳が続いたり、肝硬変になって黄疸になったり、腹水(お腹に水が溜まること)が溜まったりしながら、徐々に痩せ細っていき食欲も無くなって死亡していったのです。散歩中に突然、急性心不全を起こし死亡する事もありました。
当時は先程の開発途上国のような状態で、防ぎようも、助けようもない病気でした。
しかし20数年まえにフィラリア予防薬が開発され、徐々に普及してくるにしたがって、フィラリアで死亡してしまう子は確実に減少してきました。ちゃんと予防すれば、100%予防できる病気なのです。
しかし残念ながら、すべての飼い主さんがフィラリア予防をしている訳ではないので(地域による差も有るかも知れませんが)、まだまだフィラリアに罹ってしまうケースも少なからず見受けられますし、フィラリアが撲滅できない理由です(残念です)。

 

 

今月はフィラリアについてお話し致しました。
そろそろフィラリア予防がスタートしだした地域が多くなってきたと思います。
愛犬がフィラリアに罹らないように最終投薬日まできちんと投薬してあげて下さい。

 

もの言えぬ動物達の場合、飼い主さんが気付いてあげる事が重要なのです。動物達が私たちに安らぎを与えてくれるお返しとして、動物達が楽しく健康でいられるように気づかってあげる事が飼い主さんの勤めとも言えるでしょう。
そのためにも、この「動物病院だより」が少しでもお役に立てればと考えております。
他にもこんなことが知りたいということがあれば、お電話でも「ペット相談室」でもお気軽にご相談下さい。
Illust:LES5CINQ(Copyright 2002-2005 All rights reserved.)
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです

 

 

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