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触っても撫でても噛んできます

10月からシェルティーを飼い、先生に診て頂いてる小嶋ゴンです。予防接種の際にゴンが噛む事を相談し、無視が一番ときき、噛んだらその場を離れるなどして無視してるのですが、続きゴンには無視されてる事がわからないのか全然効果ありません、尻尾をふりながら噛みにきます。1人でよく興奮し、そういう時は、余計に噛む力も強いのです。あと、体を撫でるのが嫌いで触ると噛んできます。
触ると噛む、撫でると噛む、甘えてきてるのに噛む、いったいどうしたらいいのでしょうか?
ペットシーツも一日30枚くらい撒き散らしています。
ブリーダーさんに相談したら、子犬の時は皆そうだから、落ち着くから大丈夫というのですが、もう不安でどんな風に躾をしていっていいのかわからず、悩んでいます。(小嶋ゴンさんより)


小嶋ゴンさんこんにちは。ゴンちゃんは私の病院の患者さんですね。ゴンちゃんの予防接種の時に噛む事についてお話ししたと思いますが、私がうまく説明できてなかったかもしれませんね。すみませんでした。

そもそも犬の行動学は野生の狼の行動パターンと酷似している点に注目し進歩してきました。言い換えれば様々な飼育犬の問題行動は野生の狼の行動パターンで説明する事ができるのです。ただ飼育されている犬は野生の犬同士だけの中で生活しているのではなく、人間社会の中で、しかも人間との関わりを持って生きていかなくてはなりません。野生の環境下では自然な行動(咬む・吠える・走る・マーキングする・攻撃する・なわばりを守る)も、人間との生活の中では問題となってくる訳です。しつけとは、この自然な行動(本能)の中でプラスになる部分を延ばしマイナスになる部分を教育し、抑制することなのです。ゴンちゃんの噛んだり、ペットシーツを振り回したりの問題行動を野生の行動の観点から見てみましょう。

かけっこしたり、小枝を取りあったり、あるいはじゃれあいながらお互いに噛み合ったりしている訳です。その遊びの中で強く咬んでしまった時は咬み返され逆襲をくらったりして、どのくらいの力で噛んだら相手から嫌われてしまうか学習していきます。
一方、遊びを通して自力の力(能力)を自覚して行く時期でもあります。場合によっては相手(この場合は飼い主さん)がたよりなく、自分の方が俊敏で体力もあると思った犬はリーダー(アルファー)になろうとし、人との生活では飼い主さんの言う事を聞かず我がままを言うようになり、飼い主さんを困らすようになっていきます。しかし、リーダー(アルファー)になってしまう犬は自ら好んでリーダーになってしまった訳ではありません。群れ(飼い犬の場合は家族)にはリーダーが必ず必要なのですが、飼い主さんが(犬から見ると)リーダーとしてたよりないと感じた時、自分がリーダーにならなくてはと思ってしまうのです。

さて、ゴンちゃんの場合、噛む行動にも2種類あると思います。
1.遊びたい欲求から噛み、あるいは遊びの中、興奮してきた時の噛み
→ご質問文章中の「尻尾をふりながらの噛み」・「甘えてきているのに噛む」
2.いやだから触るなという欲求からの噛み
→ご質問文章中の「触ると噛む」・「撫でると噛む」

しかし、いずれの場合も、犬側の要求が隠されているのです。もしゴンちゃんがしゃべれたら、
先程の1の噛みの場合「遊ぶからつきあえ!!」
先程の2の噛みの場合「うるさいから触るな!!」
と言っていると考えられ、犬の方が主導権を握っているように思われます。
これは先程述べた兄弟同士で遊んでいるうちに自分の方がリーダーだと考えだしたと思います。

小嶋さんの問題を解決するためには、
1.まず重要なのは、日頃の生活の中であらゆる点で飼い主さんがリーダーである事を教える必要があります。
以前に同じようなご質問をいただいていますので、その回答を参考にして下さい。又本院にてお渡ししたと思いますが、「飼い主さんがリーダーになるため」の各種資料にもとても良い事が書かれていますのでもう一度読んでみて下さい。※毎日の努力が必要です。

2.噛んできた時にただ無視し、その場を立ち去る事も悪い方法ではありませんがそれは最後の手段です。
その前に噛んだら、相手から逆襲をくらうということを教える必要があります。具体的には噛んだ瞬間「チッ」とか「痛い」と大きめの鋭い声を出します。要はゴンちゃんが一瞬「ハッ」と驚けば良いのです。(決して叩いたりの暴力で教えてはいけません)

それでもわからず噛みにくる場合は無視し、その場を立ち去るようにしましょう。ただ無視し、その場を立ち去るだけだともしかするとゴンちゃんは「ちょっとおどかしたら、逃げていった。飼い主さんより、おれの方が強いんだ!!またいやな事をされそうになったら、噛んだり、うなったりしてやろう」と考えているかもしれません。
まとめると噛む事だけ直すという視点をすて、まず、飼い主さんがリーダーである事を植えつける教育をし、それと並行して噛んできた時には鋭い声で「チッ」と言い、ゴンちゃんを「ハッ」とさせましょう。
ブリーダーさんの言うようにこの頃の犬は多かれ少なかれ、こういった遊びをします。
しかし、お話ししましたようにこういった遊びを通じて、我がままが通る事を学習してしまうとリーダーになっていってしまいます(権勢症候群orアルファーシンドローム)。3ヶ月ちょっとなのでまだまだ遅くはありません。飼い主さんがリーダーになるための項目を毎日の生活の中で実行し、持続していく事だと思います。今回よくわからなかった点があれば、また来院された時にどんどんご相談下さい。(2002.11.26)