マスダ動物病院のエピソード
ご家族の愛情に包まれて…(長寿のメグちゃん・15歳)
毎年、静岡市民文化会館の大ホールにて行われております静岡市動物慰霊祭が、去るH26年9月21日に大勢の方が参加される中、執り行われました。

 

その中で、会場にいる沢山の方が見守る中、長寿動物飼育功労者賞を受賞された方々が表彰され、今年も当院からは猫のチビちゃん19歳と、犬のメグちゃん15歳の飼い主さんが受賞されました。
この賞を受賞することは本当に嬉しいですね。動物を飼っている皆さんにとって、憧れの賞なのではないでしょうか。「本当におめでとうございます」

 

今年受賞した、とっても頑張っている家族思いの動物たちは以下の通りです。
犬 19歳(2匹)・18歳(3匹)  大型犬 16歳(1匹)・15歳(2匹)
猫 21歳(1匹) 20歳(2匹) 19歳(2匹)  合計 犬8匹・猫5匹
会場の大きなスクリーンには、幼少の頃から現在までの姿が映し出され、その幸せそうな姿に思わず目頭が熱くなってしまいました。

 

今回、受賞されましたTさんのお宅のラブラドール・レトリバーのメグちゃんは、いつもやさしそうなお父さんとお母さんに付き添われ、自力で歩いていた頃はゆったりとした足取りで病院にやって来ました。
どんな時も慌てず、いつもやさしい雰囲気を漂わせているメグちゃんは、今年の夏頃から寝たきりの状態になりましたが、ご家族の愛情に包まれて、とてもしあわせに暮らしているようです。
そんなメグちゃんがこれまでどんな暮らしをしてきたのか、メグちゃんのお母さんがこれまでの歩みを振り返りながら、メグちゃんとの出会いから今現在の様子までをまとめてくださいました。
愛情溢れるご家族の中、しあわせいっぱいのメグちゃんのお話を、是非ご覧頂けたらと思います。

 


 

メグとの出会い
ブリーダーの友人に室内犬の飼い方について相談にのってもらった時、繁殖用に友人が手元においていたのが、マーガレットでした。
マーガレットは「メグ」という愛称で呼ばれていた、まん丸の瞳と黒いツヤツヤの毛が印象的な生後3ヶ月のラブラドールで、ヨチヨチ歩く姿が可愛らしく、一目で気に入ってしまいました。

 

他の兄弟姉妹たちは新しい家族に引きとられて行ったのですが、その仔犬は右脇腹にキズがあったため、その子だけ残り、家族の愛情をいっぱい受けてのんびりと育てられていました。
その子を我が家の家族として迎え入れたいと友人にお願いして、大型犬を飼う心構えや準備の説明を受け、それから1ヶ月後、引きとりに行きました。

 

メグは名前を呼ぶとしっぽをブンブン振って、腕の中に飛び込んで来てくれました。家では高齢の義父母が赤ちゃん犬を抱っこしたくて待っています。
しかし4ヶ月目のメグは体重16kg、父犬45kg、母犬35kgの大きなラブラドールなので、これからどこまで大きくなるのか?期待と不安のスタートでした。

 

家族の一員
人なつこく、好奇心旺盛、遊び好きのメグは、初日から我が家に慣れ、すぐに溶けこみました。
小さな赤ちゃん犬をひざに抱っこする義父母の夢は、このパワフルな大きな赤ちゃんにかき消されましたが、愛くるしい表情やしぐさにメロメロになり、メグはいつも家族の中心にいるようになりました。
イタズラも大好きですが、頭がとても良く素直なので、低い声で「ダメッ!」と注意するとピタッとイタズラをやめます。叱る時に名前を呼ばないように気をつけると、「メグ」と呼ぶと何をしていてもすぐ駆け寄って来るようになりました。
しつけは「待て」「座れ」「伏せ」「良し」程度で、芸は教えませんでしたが、すぐ覚える賢く聞きわけのいい子で、困ることはほとんどありませんでした。

 

知恵くらべ?
本気の「ダメッ!」と「ダメでしょ~♡」の違いがわかるようになり、時々、家族の気を引きたくて、わざと許してもらえるようなイタズラをすることがありました。私の顔をのぞきこんでしっぽをブンブン振っています。
いつもは軽く口を開け舌を出しているのに、ギュッと口を閉じています。口をこじ開けると、ゴミ箱に捨てた紙くずを口の中に隠していました。
「ねえねえ、イタズラしているよ。叱って!もっと私を見て。」と瞳をキラキラさせて話しかけて来ます。悪いことをしているのに、可愛くってつい「ダメでしょ~♡」と抱き寄せてしまいます。メグの思うつぼです。
掃除機をかけていると、これから掃除する場所に先回りして寝そべってジャマしたり、本気で叱られないかわいいイタズラを考えるようになりました。
困ったのは、私と主人が一緒に出かける時に、連れて行ってもらえないと、急に元気がなくなり仮病をつかったり、食べたごはんを吐いて、心配させて外出をやめさせようとすることが何度もあったことです。
「分離不安」というそうですが、次第に私達がメグを残して外出するのが心配になって来て、私たちこそがメグに対して「分離不安」になってしまいました。
どうやらメグの方が私たちより賢いようです。

 

たくさんの思い出
走り回ること、泳ぐことが大好きで、富士五湖や青木が原の樹海の散歩、森に囲まれたペンションへの旅行など、楽しい思い出がたくさん出来ました。
特に泳ぐことが大好きで、川遊びに行った時、岩から川の深い所に飛びこみをしている子供たちの列の一番後ろに並び、飛びこむので「順番待ちをする犬」と子供たちの人気者になりました。
水の中に飛びこむ楽しさを覚えたので、ある時、山の斜面の段々の茶畑が水に見えたらしく、きれいに刈り込まれたお茶の木の上に思いきりダイブして、「ボスッ」っと腹打ちで乗っかってしまったことがありました。その時の「トホホ…」な顔は今でも忘れられません。

 

高齢期を迎えて
12歳頃からは階段や段差が苦手になり、少し後ろ足を引きずりながら、ゆっくり散歩することが唯一の運動になりました。
表情豊かなおしゃべりな瞳は閉じている時間が増え、笑顔が乏しくなり、しっぽの動きも減りました。まっ黒ツヤツヤの顔や体は白髪だらけですが、供に過ごした年月の積み重ねに感じられ、愛おしさが増すばかりです。

 

精悍な顔立ちから、老犬の穏やかな顔つきに変り、優しい眼差しになると、若い時以上に、散歩中に声をかけていただく機会が増えました。
飼いはじめの頃は、黒くて大きいので怖がられることも多かったのですが、15年の間にラブラドールは穏やかな犬種だということが認知され、特にメグは吠える、咬むが無い子なので、多くの犬嫌いの人やワンコを治してきました。

 

寒い冬のある日、工事中の道路をメグと通りかかると、交通整理をしていた若い男性と目が合いました。
メグがゆっくり近づくと、ニコニコしながら「触っていいですか?」との事。「どうぞ」と言うと、最初は頭や背中を撫でていたのが、突然ガバッとメグをはがいじめのように抱きしめ「あったか~い。生き返る。」と顔をメグの首筋にうずめて来ました。
メグはじっとしています。「ゴメンネ。」とその男性はメグに言いましたが、メグの瞳は「大丈夫。慣れているから。」と語っています。
いつも新聞配達のお兄さんが「癒される~。」と抱きつくし、私たち家族も、湯たんぽや抱き枕、相談相手としてなど、毎日のように心を救ってもらっているのです。メグも自分の役割がわかっているので、優しい瞳で全て受けとめてくれます。

 

思い起こせば、メグが我が家に来た頃は、私も結婚して間もなく、近所に知り合いもいなかったのに、今ではメグの犬友達だけでなく、近所の子供からお年寄りまで多くの人がメグに会いに来てくれ、知り合いも増えました。
メグを介して付き合いの輪が広がっています。

 

そして今
15歳の誕生日を2014年4月にむかえ、散歩を楽しみ食欲も旺盛で、穏やかに日々を過ごす毎日が続きました。
子犬の時からお世話になっているマスダ動物病院の増田先生に推薦していただき、静岡市から贈られる「長寿動物飼育功労者賞」を受賞した15匹のご長寿ワンコ・ニャンコの1匹に選ばれ、9月に表彰状をもらいました。
とても名誉で喜ばしいことで、表彰式では他の飼い主さんたちと情報交換をしたり、良い思い出が出来ました。メグにはさらに健康で長生きをしてほしいと願うばかりです。

 

6月頃から立ち上がることが出来なくなり、寝たきりになりましたが、排泄は立ち上がってしたがります。寝返り・食事・排泄など介助が必要となり、1日の大半をメグのそばで過ごすようになりました。
大型犬の介護は体力が要り大変ですが、メグとの関わりが今まで以上に濃密になり、ゆっくり静かな時間が流れています。今までメグの存在が私たちの心を救ってくれたので、感謝と恩返しのつもりでお世話をさせてもらい、心の準備の時間にしています。

 

吠えることのなかったメグが、最近切ない声で呼ぶようになりました。
メグは私たちの言葉がよくわかるのに、私たちはメグの要求に応えられているのかと悩みながらも、瞳を見つめて感じとったり、話しかけています。
メグの気持ちに寄り添って、この穏やかな日々が1日でも長く続くことを願っています。

 

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